
男性育休の国際比較|制度は世界一の日本が、それでも北欧に勝てない理由
男性育休の取得率が令和7年度に50.9%となり、初めて5割を超えました。しかも日本の育休制度はユニセフの評価で世界1位。では日本は男性育休の先進国なのか。6ヶ月以上取る父親は日本6.4%に対しスウェーデン41.6%。取得率だけでなく期間まで見ると差がはっきりします。17ヶ月取ったパパが整理しました。
はじめに:50.9%は、喜んでいい数字なのか
2026年、男性の育児休業取得率が50.9%になりました(令和7年度・厚生労働省「雇用均等基本調査」)。初めて5割を超えたことになります。
推移を並べると、変化の大きさが分かります。
| 年度 | 取得率 |
|---|---|
| 平成21年(2009年) | 1.56% |
| 令和3年度 | 13.97% |
| 令和6年度 | 40.5% |
| 令和7年度 | 50.9% |
2年連続で10.4ポイントずつ上がっています。「男性が育休を取るのは珍しい」という前提は、もう成り立ちません。
しかもあまり知られていませんが、日本の育休制度は世界一と評価されています。
では日本は男性育休の先進国になったのか。残念ながら、まだです。取得率の"中身"を見ると、北欧との差がはっきり出ます。
この記事では、日本の立ち位置を数字で整理します。17ヶ月の育休を取った当事者として、その差がどこにあるのかも書きます。
📌 この記事で分かること
- 日本の育休制度が世界1位と評価された理由
- 取得率50.9%の中身(ここが一番大事)
- スウェーデン・ノルウェーと何が違うのか
- 数字を比べるときに気をつけるべきこと
日本の育休制度は、本当に世界一です
まずここは事実です。
ユニセフの研究機関(UNICEF Office of Research - Innocenti)が2021年6月に発表した報告書「先進国の子育て支援の現状」で、日本はOECD・EU加盟国の中で1位と評価されました。
評価の理由は明確です。
完全賃金の週数に再計算した父親の育児休業の期間が最も長いこと
つまり「父親がどれだけの期間、どれだけの給付を受けながら休めるか」という物差しで、日本が一番だということです。
実際、日本の男性は最長で子が1歳になるまで(条件により最長2歳まで)育休を取れます。給付も休業前賃金の67%(180日経過後は50%)が出て、社会保険料は免除、給付金は非課税。2025年からは出生後休業支援給付金も加わりました。
権利としては、世界のどこよりも手厚い。これは誇っていい事実です。
⚠️ ただし、取得率50.9%の"中身"を見てください
ここからが本題です。
日本の取得率は「1日でも取得すれば1人」としてカウントされます。1年取った人も、3日取った人も、同じ「取得した人」です。
では実際、どれくらいの期間取っているのか。厚生労働省の調査(令和5年度・取得期間の最新値)ではこうなっています。
| 取得期間 | 割合 |
|---|---|
| 5日未満 | 15.7% |
| 5日〜2週間未満 | 22.0% |
| 2週間〜1ヶ月未満 | 20.4% |
| 1ヶ月〜3ヶ月未満 | 28.0% |
| 3ヶ月〜6ヶ月未満 | 7.5% |
| 6ヶ月以上 | 6.4% |
まとめると、こうなります。
- 2週間未満:37.7%(約4割)
- 2週間〜3ヶ月未満:48.4%
- 6ヶ月以上:わずか6.4%
5日にも満たない人が15.7%いる一方で、半年以上取る人は100人に6人です。
取得率が5割を超えたのは大きな前進ですが、「取った」の中身は、まだかなり薄いというのが実態です。
北欧と比べると、差がはっきりします
スウェーデン
制度はこうなっています。
- 子ども1人につき最長480日の両親休業
- うち各90日は父・母の専用枠で、相手に譲れない
- 取得率は30代男性で90%、40代で93%
そして注目すべきは中身です。
- 父親が取得する日数は、全育休日数の約30%(母親が70%)
- 6ヶ月以上取る父親が41.6%
ここで日本と並べてみてください。同じ「6ヶ月以上」という基準で見ると、こうなります。
| 6ヶ月以上取る父親の割合 | |
|---|---|
| 日本 | 6.4% |
| スウェーデン | 41.6% |
6.5倍の差です。
取得率は日本50.9%、スウェーデン90%台で「2倍弱の差」に見えます。でも期間まで見ると、差は一気に広がります。取得率の数字だけを比べていると、この落差は見えません。
ノルウェー
- 76%の父親が育休を取得
- そのうち33%がパパ・クオータ分を満期取得、37%はそれ以上の日数を取得
比較可能な11か国の平均
内閣府の資料によれば、比較可能な11か国(スロベニア、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、スペイン、リトアニア、エストニア、アイルランド、ポーランド、オーストラリア、ハンガリー)の男性育休平均取得率は55%です。
日本の50.9%は、ようやくこの平均に近づいたところです。ただし前述のとおり、期間の中身は別問題です。
なぜ差がつくのか:使わないと消える仕組み
北欧が高い理由は、精神論ではありません。制度の設計が違います。
パパ・クオータ制——父親だけに割り当てられた期間があり、使わなければ消滅するという仕組みです。母親に譲ることができません。
スウェーデンなら各90日、ノルウェーにも同様の枠があります。「取らないと損」ではなく「取らないと消える」。だから取ります。
一方の日本は、制度は手厚いけれど、取るかどうかは本人と職場次第です。権利があっても、言い出せなければ使えません。
世界一の制度を持ちながら取得率が低かった理由は、ここにあります。制度の問題ではなく、使える空気があるかどうかの問題でした。
17ヶ月取ってみて思うこと
僕は施工管理の現場代理人として、1人目で7ヶ月、2人目で10ヶ月、合計17ヶ月の育休を取りました。「建設業で17ヶ月なんて無理」と言われ続けた業界です。
スウェーデンの数字と比べるときは、子ども1人あたりで見る必要があります。あちらの480日は子ども1人につきの制度だからです。
その基準で並べるとこうなります。
| 期間 | |
|---|---|
| 僕の1人目 | 7ヶ月 |
| 僕の2人目 | 10ヶ月 |
| 日本で6ヶ月以上取る父親 | 6.4% |
| スウェーデンで6ヶ月以上取る父親 | 41.6% |
2回とも6ヶ月を超えているので、日本では6.4%の側に入っていたことになります。逆に言えば、スウェーデンなら41.6%の中の1人。特別でも何でもない、ごく普通の父親という扱いです。
同じことをしても、国が違えば「珍しい人」にも「普通の人」にもなる。この差が、制度ではなく空気の差だと思っています。
ただ、大事なのはそこではありません。これは特別に認められたものではなく、制度上は誰にでもある権利だったということです。
取ってみて実感したのは、制度は本当に整っているということです。給付金も出ましたし、社会保険料も免除されました。手取りの減り方も、事前に思っていたより緩やかでした。
足りなかったのは制度ではなく、「取っていい」と思えるかどうかでした。上司に切り出すときは正直かなり緊張しましたし、前例もありませんでした。
世界一の制度は、もう手元にあります。使うかどうかだけが残っている。50.9%という数字は、その扉が開き始めたことを示していると思います。
⚠️ 数字を比べるときの注意
最後に、公平を期すために書いておきます。
国際比較は、そのまま並べられません。理由は3つあります。
① 取得率の定義が国ごとに違います。日本は「1日でも取得すれば1人」ですが、他国は数え方が異なります。母集団の取り方も国によって違います。
② 制度そのものが違います。スウェーデンの「両親休業480日」は父母で分け合う設計で、日本のように父母それぞれが別枠で取る仕組みとは前提が異なります。単純に日数を並べても比較になりません。
③ 統計の年度が揃っていません。この記事の日本の取得期間は令和5年度、取得率は令和7年度のものです。海外の数字も調査年が異なります。
なので「日本は世界◯位」と断言するのは避けたいところです。大きな傾向として、日本は制度が手厚く、実際の取得期間は短い——この理解が実態に近いと思っています。
まとめ
- 男性育休の取得率は令和7年度に50.9%。初めて5割を超えた
- 日本の育休制度はユニセフの評価で世界1位(父親が取れる期間×給付の手厚さ)
- ただし取得率の中身は薄く、2週間未満が37.7%。6ヶ月以上はわずか6.4%
- スウェーデンは父親が全育休日数の30%を取り、41.6%が6ヶ月以上(日本の6.5倍)
- 差の原因はパパ・クオータ制(使わないと消える仕組み)
- 日本に足りないのは制度ではなく、取れる空気
「制度は世界一なのに、誰も使わない国」——長くそう言われてきました。それが今年、半分の人が使う国になりました。
次の課題は期間です。取得率が5割を超えた今、「何日取ったか」が問われる段階に入ったと思っています。
参考・出典
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(男性の育児休業取得率50.9%)
- 厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」(男性の育児休業取得期間)
- 内閣府男女共同参画局「我が国の育児休業制度は世界一!?男性の育児休業の変遷と背景」
- UNICEF Office of Research - Innocenti「先進国の子育て支援の現状」(2021年6月)
- ※本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。国際比較は統計の定義・調査年が国ごとに異なるため、傾向を示すものとしてお読みください。
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